女性のための鍼灸師が教える!血管運動神経症状編 ~動悸~
「東洋医学の観点から更年期に向き合うシリーズ」の今回は、更年期世代の症状の中でよく聞かれる「動悸」についてお話ししていきます。
動悸も東洋医学で治療できるの?と思った方も多いと思います。動悸の原因には、いくつか種類があります。種類によっては、その影に、様々な疾患が隠れています。
このシリーズでは主に東洋医学の観点でのお話しですが、自分の体が変だなと感じたら、必ず専門医を受診しましょう。
血管運動神経症状編 ~動悸~
「動悸」とは、自覚的な症状で心臓の拍動を強く感じ、不快に感じる症状のことです。
動悸の原因として、
①不整脈によるもの
②強い心臓の拍動が起こるもの
③精神不安によるもの
の3つに分かれます。①や②については、心臓関連の疾患やその他甲状腺等の可能性もあります。既に疾患をお持ちの場合は、その発作等を予防するような補完的な意味合いとして捉えていただきたいです。
③について、代表的な疾患として、心臓神経症があります。これは、心臓に問題はないにも関わらず、強い不安や恐怖と共に動悸を訴える症状です。これは、自律神経が影響していて、交感神経という興奮したり、活発に動く際に働く神経の活動が亢進する時に起こります。
更年期世代の方の動悸の場合も、この自律神経の乱れによる交感神経の活動が関与している可能性が高いです。
東洋医学でいう「動悸」とは?
東洋医学では、動悸を2つに分類します。
①驚きや恐れ、悩みや、怒りといった精神的なものから起こる
②明らかな原因がなくても動悸を自覚する
の2種類に分けます。
①は一時的な症状で軽症ですが、②になると慢性的となり重症の症状として捉えます。
五臓の中の「心」が、現代医学でいう心臓と同じような機能や働きを持っています。「心」の働きは「気・血・水」によりエネルギーや栄養を得て働いています。
その内、そもそものエネルギーである「気」や栄養となる「血」が不足することにより、適切に働くことができず動悸が起こるとされています。
あなたはどのタイプ?
動悸の症状に加え、その他の特徴などから、ご自身の体を評価していきましょう!
一つでもチェックが当てはまれば、そのタイプに該当します。タイプはどちらか一つというわけではなく、両方とも当てはまる方もいるかもしれません。
①”息切れがある”動悸のタイプ
□動悸に加えて息切れがある
□何もしていなくても汗が出る
□驚きやすい、または、怖がりである
□顔色が白い
□手足が冷える
②”めまい”がある動悸のタイプ
□動悸に加えめまいがある
□不眠気味、または、寝る時に夢をよく見る
□口や喉が乾燥する
□寝汗をかく
□手足がほてる
①のタイプは、心身の疲労やストレスなどにより、情緒が安定せず動悸へと発展しています。また、体のエネルギーとなる「気」が不足することで血液の流れが弱くなってしまい、「心」を適切に動かすことができない状態です。そのため、動悸が起こってってきます。
②のタイプは、消化器系の機能である「脾」が弱ることにより、食欲低下や食べても適切に栄養を体に取り込めません。そのため、「心」への栄養も不足し動悸が起こります。
ツボ押しでセルフケア!
あなたはどちらのタイプでしたか?
東洋医学では、出現している症状を一つの病気と断定するのではなく、様々なことを複合して考えていきます。
二つとも当てはまったため、自分の体の症状が悪いというわけではないので安心してください。大切なのは、自分の体の症状を理解し適切な処置をしていくことです。
それでは、それぞれのタイプに良いツボをご紹介していきます。
ツボは、1回に5秒間程度2~3回、押しやすい指で痛気持ち良い程度に押しましょう!
目安は、毎日1回。習慣化していくのがベストなので、朝起きたらベットの中で、お風呂を出た後に、など時間を決めて押してみてください。
①のタイプの方
◇神門(しんもん)
<位置>
手首のシワの上。小指の付け根から手首の方へ下がった位置。
<効果>
心身のリラックス。精神の安定。
◇巨闕(こけつ)
<位置>
ミゾオチにある出っ張った骨の下で、骨から指3本分下がったところ。
<効果>
動悸、胸痛、胸焼けなどに効果がある。
②のタイプの方
◇通里(つうり)
<位置>
神門(①のタイプで紹介)から指1本分、肘側に下がったところ。
<効果>
精神の安定。不眠の改善。
◇足三里(あしさんり)
<位置>
膝のお皿の下で、指4本分下がったところ。すねの骨の外側。
<効果>
消化機能の回復。
※出典
矢野忠(2012年)更年期障害 矢野忠 鍼灸療法技術ガイドⅡ 文光堂 p.62-70, p951-960
矢野忠(2014年)レディース鍼灸 医歯薬出版株式会社