更年期のドライアイに要注意!症状・原因・対処法を解説

更年期を迎えると、目の乾きやゴロゴロ感といった「ドライアイ」の症状に悩む女性が増えてきます。こうした症状は加齢だけでなく、女性ホルモンの変化も関係していることをご存じでしょうか。
ドライアイを放置すると、見えにくさや目の痛みだけでなく、仕事や家事のパフォーマンスにも影響することがあります。
この記事では、更年期に起こりやすいドライアイの原因や特徴、対処法について詳しく解説します。
乾きだけではない!ドライアイの症状
更年期には、女性ホルモンバランスの変化と加齢、さらに生活環境の影響が重なり、涙の分泌や目の表面のバリア機能が低下しやすくなるため、目に不快感を覚える機会が増える方が多くなります。
特に「目が乾く」「しょぼしょぼする」といった症状は、単なる加齢だけではなく、ドライアイの可能性があるため注意が必要です。
ドライアイでは、主に以下のような目の不快感が現れることがあります12。
- 目の乾き、ゴロゴロする異物感
- しょぼしょぼして開けていられない
- かすみ目、視界のぼやけ
- 涙が出すぎる(実は乾燥が原因の反射性流涙)
- 目の充血や疲れやすさ
- 夕方になると特に症状が悪化する
これらの症状は一見軽く見られがちですが、実際には読書やスマートフォン操作、運転などの日常生活に支障をきたすこともあるため、軽視できません。
特に注意したいのは、かすみ目や視界のぼやけを「老眼のせいかな」と見過ごしてしまうことです。見えにくさの背景にドライアイが潜んでいることもあるため、違和感を覚えたら早めの対処が重要です。
更年期にドライアイが起こりやすい理由
更年期世代は、他の世代と比べてドライアイを発症しやすいといわれています。日本の調査では、40歳以上のドライアイの有病率は女性で21.6%、男性で12.5%と報告されており、性別や年齢がリスクに大きく関係していることがわかります3。
また、日本眼科学会のガイドラインでは、ドライアイは加齢とともに発症リスクが高まりやすく、特に冬から春にかけての季節や、女性であることが有病率の高さに関連しているとされているのです。
ホルモンの変化による影響
更年期を迎えると、性ホルモンであるエストロゲンやアンドロゲンの分泌量が大きく変化します。これらのホルモンは、涙腺やまぶたのマイボーム腺といった涙の生成や油分の分泌を担う器官に密接に関与しています。
特に注目すべきは、涙の質に関わる油層を形成するマイボーム腺の働きが、アンドロゲンにより調整されている点です。更年期にこれらの性ホルモンが減少することで、涙の量だけでなく質のバランスも崩れ、蒸発しやすい涙となり、目が乾きやすくなります4。
さらに、角膜や結膜にはホルモン受容体が存在することが研究で示されており、ホルモン変化が目の組織そのものに作用している可能性も指摘されています。つまり、更年期に伴うホルモンバランスの変化は、ドライアイの発症に直接関わる生理的なメカニズムがあるのです。
加齢に伴う筋力・機能低下
更年期には、まばたきを担う眼輪筋やまぶたの筋肉が衰えることで、まぶたが閉じ切らない不完全なまばたきになり、涙が目全体に行き渡らなくなります。その結果、涙の分布が偏り、目の表面が乾燥しやすくなるのです。
また、加齢によりまぶたが緩む「眼瞼弛緩症」や、目が突出して見えるようになる「眼球突出」などの変化が現れることもあります。これらは目の表面の露出を増やし、涙の蒸発を促進する要因となるため、ドライアイの一因になる可能性があります。
生活習慣や環境による影響
現代人の生活スタイルも、ドライアイを引き起こす大きな原因のひとつです。とくにパソコンやスマートフォンなどの画面を見る時間が長い人は、無意識にまばたきの回数が減る傾向があります。こうした長時間のパソコン作業(VDT作業)は、ドライアイ症状のリスクを高めるとされています[1][3]。
また、空調が効いた乾燥した室内環境や、湿度の低下、低温といった外的要因も、涙の蒸発を早め、目の表面を乾かしやすくします。冬場の暖房使用時だけでなく、エアコンの効き過ぎた環境は特に注意が必要です。
さらに、睡眠不足や喫煙、ストレスといった生活習慣も、ドライアイの発症や悪化に関わるといわれています[3]。ストレスによる自律神経の乱れが涙の分泌を妨げる可能性もあり、生活のリズムを整えることが症状改善の鍵になります。
40代・50代から始める【ドライアイ対策】
ドライアイの予防と症状の緩和には、毎日の暮らしのなかで実践できる具体的なセルフケアが欠かせません。ここでは、特に更年期世代の方におすすめしたいセルフケアを紹介していきます。
意識的にまばたきを増やす
まばたきは涙を目の表面に行き渡らせ、乾燥を防ぐ重要な働きを担います。パソコンやスマホの長時間使用によってまばたきの頻度が減り、不完全なまばたきが増えると、涙が均等に広がらず目が乾きやすくなります。
更年期世代ではこの傾向が強まりやすいため、意識的に「しっかりまぶたを閉じる」まばたきを増やすことが、涙の安定とドライアイ予防につながります。
加湿器を使用して湿度を保つ
室内の湿度が低いと、涙が蒸発しやすくなり、ドライアイの症状が悪化します。特に冬場やエアコン使用時は空気が乾燥しがちです。室内環境を整えるためには、加湿器などを使って湿度を40〜60%に保つことが効果的とされています。
特に就寝中や長時間の室内作業を行うときには、意識して加湿することで目の乾燥を防ぎやすくなります。目の健康維持のために、快適な湿度を保ちましょう。
目を休める時間を確保する
パソコンやスマートフォンなど、近くを見る作業を続けると、目の筋肉に負担がかかり、ドライアイの原因にもなります。作業をする際は20分ごとに20秒の「目の休憩」をとるよう心がけましょう55)。
意識的に遠くを見る、目を閉じる、軽くストレッチするなどの工夫を取り入れることで、涙の安定や目の疲労軽減につながります。
ブルーライトや紫外線を防ぐ
ブルーライトは、長時間浴び続けると目の疲労や涙の不安定化を招くとされています。ブルーライトカット眼鏡や画面フィルターを活用することで、目への負担を軽減できます。
また、紫外線も角膜など目の表面に炎症を引き起こす原因となり、ドライアイの一因になります。外出時はUVカット機能のあるサングラスやコンタクトレンズを使うことが、紫外線対策として有効です。
栄養バランスを見直す
ドライアイ対策として、食事からの栄養補給も重要です。特にオメガ3脂肪酸は、涙の質を改善する働きがあるとされ、青魚やえごま油、亜麻仁油などから摂取できます。サプリメントで補うのも一つの方法です3)。
また、ビタミンA・C・Eといった抗酸化ビタミンも、目の粘膜を保護し健康を保つために有効と考えられています。ほうれん草、ブロッコリー、青魚などをバランスよく食事に取り入れ、体の内側からのケアも意識しましょう。
点眼薬を活用する
ドライアイのセルフケアとして、市販の人工涙液の使用は有効ですが、防腐剤が含まれていないタイプを選ぶのが望ましいとされています。特にコンタクトレンズを装用している場合は、涙液成分に近い防腐剤フリーの製品を選び、レンズ素材やケア用品についても眼科医に相談すると安心です1)3)。
症状が強い場合には、ヒアルロン酸配合の点眼薬などが必要になることもあります。
市販の点眼薬で症状が改善しない場合は、眼科を受診しましょう。
眼科を受診する
眼科ではドライアイの症状や原因によって、さまざまなタイプの点眼薬を使い分ける治療が受けられます。
また、重症のドライアイでは点眼薬だけでは不十分なケースもあり、自分の血液から作る「血清点眼」や、涙の出口を物理的に塞ぐ「涙点プラグ」といった治療法が選択肢となります1)3)。
目の乾きやかすみなどの症状が強い、あるいは長引く場合は、自己判断せずに早めに眼科を受診しましょう。
更年期のドライアイは放置せず、正しいケアを
更年期に起こるドライアイの背景には、女性ホルモンの変化や加齢、生活環境の影響が複合的に関係しています。乾きや疲れ目といった不調を年齢のせいと片付けず、まずは自分の症状に気づき、生活習慣や環境を見直すことが大切です。
セルフケアで改善が見られない場合や症状が強いときには、ためらわずに眼科を受診しましょう。
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