夕食後に寝てしまうのは病気?更年期は高血糖に注意

「夕食後、ソファでうたた寝。気づけば深夜で、慌ててベッドに入っても今度は目が冴えて眠れない」
という経験はありませんか?
仕事や家事で疲れているから、まあいいか……と放置してしまいがちですが、もしかしたら、その眠気は単なる疲れだけではないかもしれません。特に私たち更年期世代の女性は、ホルモンバランスの変化によって血糖値が乱れやすく、それが思わぬ不調を引き起こしている可能性があるのです。
この記事では、なぜ夕食後に強い眠気が襲ってくるのか、更年期特有の血糖値の乱れとどう関係しているのか、そして今日から始められる具体的な対策について解説します。
夕食後寝落ちして夜眠れなくなる
夕食後、テレビを見ながらつい寝落ちしてしまうことが増えてきた50代の真理子さん(仮名)。
最近は軽いホットフラッシュを感じるようになり、以前よりも疲れやすくなったと自覚しています。仕事や家事に追われる毎日で、夕食を終える頃には体が重くなり、気がつくとソファでうたた寝してしまうこともしばしばです。その結果、ベッドに入っても寝つきが悪く、朝はすっきり起きられず、睡眠リズムが乱れてきたことを気にしています。
「ちゃんとベッドで寝ないと……」と分かっていても、夕食後の眠気に勝てない日々が続いています。
食後に眠くなるのは自然なこと
食後に少し眠くなるのは、実は体にとって自然な反応です。まずは、食後に眠くなる仕組みを簡単に見ていきましょう。
消化の影響
食事をすると、私たちの体は血液を胃腸に集中させます。そのため、一時的に脳への血流が減り、眠気を感じやすくなるのです。特に、食べすぎた場合や、揚げ物など脂質の多い食事は、消化に時間がかかるため、眠気が強くなる傾向があります。
血糖値の変化
食事を摂ると、血液の中に「糖」が増えます。これが「血糖値が上がる」ということです。すると、膵臓から「インスリン」が分泌されます。インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込ませることで、血糖値をちょうど良い状態に保ってくれます。
ところが、甘いものや炭水化物を食べ過ぎると血糖値が急上昇。すると、慌てた体がたくさんのインスリンを出し、今度は血糖値が急降下してしまうことがあるのです。
この急上昇と急降下という「血糖値の乱高下」が、食後に襲ってくる強い眠気やだるさ、集中力の低下を引き起こす原因の一つと考えられています。
強い眠気は【食後高血糖・血糖値スパイク】のサイン?
食後の眠気があまりにも強かったり、だるさ、集中力の低下、イライラ感などを頻繁に感じる場合は、もしかしたら「食後高血糖」や「血糖値スパイク」が起きているサインかもしれません。
血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急激に上昇し、その後急降下する状態のこと。この急激な変化が繰り返し起こると、膵臓の機能が低下し、糖尿病のリスクを高めると言われています。
また、血糖値の急激な変動が血管にダメージを与え、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中といった生活習慣病のリスクも高めることが知られています。
40代・50代|更年期女性が高血糖になりやすい理由
更年期世代の女性は、なぜ血糖値が乱れやすいのでしょうか。その理由は大きく2つあります。
エストロゲンの減少
女性ホルモンのエストロゲンは、血糖値を下げるインスリンの働きをサポートしています。更年期でエストロゲンが減少すると、このサポートが弱まり、血糖値のコントロールが難しくなります。
筋肉量や基礎代謝の低下
年齢とともに筋肉量は減少し、基礎代謝も低下します。基礎代謝が下がると、エネルギー消費量が減り、余分な糖が血液中に溜まりやすくなってしまうのです。
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4つの対策で高血糖を防ぐ
血糖値の乱れを防ぎ、夕食後の強い眠気を改善するには、毎日の食事や生活習慣の見直しがカギになります。
1.食事を抜かない
食事を抜くと、次の食事で一気に食べてしまうことが増えます。長い空腹時間の後はドカ食いになりやすく、一気に糖質が吸収されるため、食後高血糖や血糖値スパイクの要因となります。一日三食を適量・規則正しく摂ることが大切です。
2.食べる順番はべジファースト
野菜に豊富に含まれている食物繊維は糖の吸収を穏やかにしてくれる優秀な栄養素。食事の最初に野菜を食べる「ベジファースト」を実践すると、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。また、野菜を最初に食べることで満腹感を得られやすくなり、食べ過ぎを防ぐことにもつながります。
ただしせっかくべジファ―ストを意識しても、早食いでは十分な効果が得られないことも。よく噛んでゆっくりと食べるようにしましょう。
3.食物繊維を1品プラス
毎日の食事に、意識して食物繊維をプラスしましょう。
海藻類(わかめ、ひじき)、きのこ類(しめじ、えのき)、豆類(納豆、豆腐)、根菜類(ごぼう、れんこん)などは、食物繊維が豊富です。食物繊維の1日の摂取目安量は20gとされています。まずはいつもの食事に、海藻サラダやきのこソテーなどの副菜を「もう1品」加えることを目標にしましょう。白米の代わりに、玄米やオートミールなどを主食として取り入れるのもおすすめです。
4.食後に運動する
食後の軽い運動は、血糖値の上昇を抑えるのに効果的。
食後30分~1時間に有酸素運動を始めると、血糖値が下がったという研究もあります。。15分程度のウォーキングやストレッチ、ヨガなど、生活の中に無理なく取り入れられる運動を見つけて習慣にしましょう。
我慢できない眠気は体からのSOSかもしれません
更年期は血糖値が乱れやすくなる時期であり、血糖値の急降下が強い眠気やだるさを引き起こすことをお伝えしました。
血糖値の乱高下を放っておくと、糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めてしまうこともあります。毎日の食生活や運動習慣に気を配ることが大切です。「最近、どうも眠気がひどい」「だるさが抜けない」と感じたら、それは体からのSOSサインかもしれません。自己判断せず、病院を受診して相談してみましょう。
参考文献
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食後に行う有酸素運動が血糖値の変動に及ぼす影響 -連続運動と間欠運動の比較-(閲覧日:2025年6月4日)