【更年期と股関節痛】原因と対処法をわかりやすく解説

股関節が痛い!40代・50代でなぜ股関節痛?更年期との関係とは?
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何か運動をしているわけでもないのに、股関節の痛みが気になることはありませんか?

股関節痛の一因として、更年期が関係している可能性があります。更年期の症状といえば、ホットフラッシュや気分の落ち込みが知られていますが、股関節の痛みもその一部となり得るのです。

この記事では、なぜ更年期に股関節痛が起こるのか、その原因と対処法を解説します。紹介する方法を実践することで、ほかの更年期症状にもよい効果が見込めるかもしれません。股関節痛を含めた更年期の症状に悩む方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

40代・50代でも股関節が痛くなる?

関節の痛みと聞くと、高齢の方が悩みがちな症状というイメージがあるかもしれません。しかし更年期世代である45〜55歳ごろの女性に、股関節の痛みがあらわれるのは珍しくありません。

たとえば、次のようなときに痛みを感じることがあります。

  • 歩き始めたとき
  • 階段を利用したとき
  • 長時間歩いたとき
  • しゃがんで物を取ったとき
  • 靴下を履いたり足の爪を切ったりするとき

痛みが軽度であれば日常生活にそれほど支障はありませんが、放置すると痛みが悪化するおそれもあります。

更年期に股関節痛が起こる理由

更年期の女性に股関節の痛みが起こる原因として、女性ホルモンや自律神経などとの関係性が考えられています。

女性ホルモン(エストロゲン)の減少による骨密度低下

更年期を迎えると、もっとも顕著に減少するホルモンがエストロゲンです。

エストロゲンは、骨の形成を助け、骨密度を維持する働きがあります。つまり、エストロゲンの分泌が減る更年期では、骨密度が低下し骨や関節が弱くなってしまうのです。1これにより、股関節を支える骨や筋肉に負担がかかり、痛みを引き起こすことがあります。

また、加齢やエストロゲンの減少によって、関節を動かすのに欠かせない潤滑油の役割を果たしている関節液の分泌も減少するため、関節が摩耗しやすくなり痛みがあらわれます。

筋力・柔軟性の低下

更年期にともなうホルモンバランスの変化は、からだ全体にさまざまな影響を与えます。

なかでも、筋肉量や筋力が減少しやすくなることが知られており、股関節を支える筋肉も弱くなって関節に過度な負担がかかります。2筋肉のサポートが不十分だと股関節の動く範囲が制限され、歩行や立ち上がりの際に痛みを感じやすい傾向があります。

さらに座っていることの多い生活や運動不足が原因で筋力が低下していると、痛みを引き起こしやすくなります。

自律神経の乱れ

自律神経の乱れはホルモンバランスの影響を受けやすく、とくに更年期にはこの問題が深刻になることが多いです。

自律神経が乱れることで血流が悪化し、関節に必要な栄養素が届かず、痛みが増すことがあります。

更年期の股関節痛【対策&セルフケア】

更年期症状としての股関節痛への対処は、ホルモンバランスを整える行動がカギとなります。

<受診>整形外科・婦人科で相談

股関節の痛みが気になる場合、まずは整形外科で診断を受けましょう。痛みの原因が更年期によるものか、別の病気(例:変形性股関節症)によるものかをはっきりさせるためです。

更年期によるものの場合は、婦人科でのホルモン補充療法(HRT)や食事、運動療法で改善が期待できます。HRTは体内に不足したエストロゲンを補う治療法で、これによって骨密度の低下を防ぎ、関節の痛みを軽減できます。

ただし、HRTは医師の指導のもとでおこなう必要があり、すべての人に適しているわけではありません。医師と相談して、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。

<運動>ストレッチや軽い筋トレで筋力UP

股関節痛には、筋力トレーニングストレッチが効果的です。

股関節周りの筋肉を鍛えることで、関節への負担が減少し、痛みが軽減されます。とくに、スクワットや歩行、ヨガなどの軽い運動が有効です。さらに、ストレッチをおこなうことで柔軟性を高め、股関節の可動域を広げられます。

こうした運動を日常生活に取り入れることで、痛みの軽減と悪化予防につながります。

<食事>骨と関節をサポートする栄養素

股関節痛の軽減や予防には、食事から必要な栄養素を摂取することも大切です。

とくに、カルシウムビタミンDは骨を強くし、関節の健康をサポートします。3また、大豆製品に含まれるイソフラボンは、エストロゲンの働きをサポートし、骨の健康を維持する助けになります。4

こうした栄養素を中心に、バランスのとれた食事を摂るよう意識しましょう。

股関節痛の対策がもたらす更年期全体へのうれしい効果

股関節痛の改善に取り組むことで、心とからだのバランスが整いやすくなり、更年期全体の不調がやわらぐこともあるのです。

たとえば、ストレッチや軽い運動を続けると、血流がよくなり自律神経やホルモンバランスも整いやすくなります。すると、ホットフラッシュや気分の落ち込みといったほかの更年期症状まで緩和されることが期待できます。

また、栄養バランスのとれた食事や生活習慣の見直しも、からだだけでなく心にもプラスの影響を与えてくれるのです。

「股関節の痛みが軽くなってから、よく眠れるようになった」「なんとなく前向きな気持ちになった」など、うれしい変化を感じる人も少なくありません。できることから気軽に始めてみましょう。

40代からの「関節に負担をかけない」生活習慣

更年期は女性ホルモンの分泌が減少し、体調や気分にさまざまな変化があらわれる時期です。

関節に負担をかけすぎないように、以下のようなことに気をつけてみましょう。

  • 急な動きや重い荷物を避ける
  • 階段を使う場面では手すりを活用する
  • 立ちっぱなし、座りっぱなしを避ける
  • こまめにストレッチをする
  • 体重をコントロールして太りすぎに気をつける

毎日の少しの工夫が痛みの予防や軽減につながります。股関節痛を含む更年期の不調に対しては、こうした変化を前提に、日々の暮らしのなかでちょっとした注意をすることが大切です。

更年期の股関節痛は正しい対処でやわらげましょう

更年期はホルモンバランスの乱れによって、股関節に痛みを感じることがありますが、これは適切な対処でやわらげることが可能です。

受診による原因の特定、筋力アップのための軽い運動、栄養バランスのとれた食事といったセルフケアは、股関節痛だけでなく、更年期全体の不調の緩和にもつながります。

年齢のせいと我慢せず、日々の暮らしのなかにできることから取り入れて、快適な毎日を目指しましょう。

参考文献

  1. エストロゲンが骨細胞のSema3Aを介して骨の恒常性を維持するしくみを解明―閉経後骨粗鬆症の新たな治療法の開発に期待|国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ↩︎
  2. 女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下することで、筋肉量が減少します。|中部ろうさい病院
    ↩︎
  3. 骨・カルシウム代謝異常症におけるビタミンDの役割|竹内靖博 ↩︎
  4. 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A|厚生労働省
    ↩︎
股関節が痛い!40代・50代でなぜ股関節痛?更年期との関係とは?

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この記事を書いた人

榎本なつみのアバター 榎本なつみ 【看護師・保健師】

総合病院のCCU・ICUでの経験を通じて、命を支える医療とともに、家族看護の大切さを学ぶ。退職後は訪問看護師として地域に根ざしたケアで利用者や家族をサポートしている。

自身が性に悩んだ過去や、更年期に苦しむ家族を目の当たりにした経験から、フェムテック分野に強い関心を抱くようになる。ライターとして、同じ悩みを抱える方々に向けて情報を発信し、自分のからだを大切にするための知識を広めることに力を注ぐ。

このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません。

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