トイレが近い【更年期の頻尿】原因と対策

「最近、トイレに行く回数が増えた」
「夜中に何度もトイレに起きてしまう」
といった悩みを抱えていませんか?
これらの症状は、更年期による頻尿の可能性があります。
特に、40代後半から50代前半の女性は、更年期に伴い、さまざまな体の変化が現れやすい時期。頻尿もよくみられる症状の一つです。
この記事では、更年期の頻尿の原因と対策について、わかりやすく解説します。
頻尿に悩む更年期女性の体験記
50代の美奈子さんから相談がありました。

トイレの回数が増えてしまって困っています。
ひどい時は1時間も我慢できません。
好きだった旅行も、トイレが気になってしまい行けなくなりました。
「漏らしてしまうかも」という恐怖で、最近は家から出るのも億劫です。
このように更年期世代で頻尿に悩んでいる女性は多くいます。そしてデリケートな話題のために、みなさんなかなか相談できずにいるようです。
40代・50代で頻尿になる原因
40代・50代の女性に頻尿が多いのは、加齢に伴う体の変化と女性ホルモンの低下が大きく関係しています。
加齢による体の変化
年齢を重ねるにつれて、私たちの体は少しずつ変化していきます。膀胱もその一つ。
加齢により膀胱の筋肉は徐々に弾力性を失い、容量が減少します。そのため、少量の尿でも尿意を感じやすくなります。さらに膀胱の収縮力も低下するため、尿を十分に排出できず、残尿感を感じることもあります。
出産経験も頻尿のリスクを高めます。出産によって、膀胱や尿道などを支えている骨盤底筋群が弱くなることで、頻尿や尿漏れの原因につながることがあります。
女性ホルモンの低下
更年期には、女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少します。これにより、尿道や膀胱の粘膜が薄くなり、細菌に感染しやすくなることで膀胱炎や尿道炎を起こし、頻尿の症状につながることがあります。
また、ホルモンバランスの乱れは、尿意に関係している自律神経にも影響を与えます。自律神経が乱れると、膀胱に余裕があるにもかかわらず、脳が尿意を感じ、頻尿の原因につながります。
何回トイレに行ったら頻尿?過活動膀胱との違いは?
頻尿は一般的に、日中に8回以上トイレに行く場合を指しますが、この回数は個々の生活習慣や水分摂取量によっても異なります。
「普段よりもトイレの回数が多くなった」「急にトイレが近くなった」と感じることが自己診断の指標となります。
一方、過活動膀胱は、膀胱の筋肉が過剰に活動してしまい、
- 尿意切迫感:突然我慢できないような強い尿意に襲われる
- 切迫性尿失禁:トイレが我慢できずに漏らしてしまう
- 夜間頻尿:夜間、睡眠中に何度もトイレのために起きる
といった症状が現れる病気です。
過活動膀胱の原因としては膀胱の神経や筋肉の異常が考えられます。これらの症状は日常生活に影響を与えるため、医師に相談することをおすすめします。
更年期の頻尿対策【セルフケア】
更年期の頻尿は、セルフケアにより改善できる可能性があります。 頻尿が気になる場合は、以下の対策を試してみましょう。
水分摂取の量・タイミングに気をつける
「頻尿だから水分を控えめにしよう」と考えるのは、実は逆効果。必要以上に水分摂取を制限すると、尿が濃縮され、膀胱が刺激されやすくなります。
1日1.5~2リットルを目安に、こまめに水分を補給しましょう。ただし、夜間の頻尿が気になる人は、就寝前の水分摂取は少なめにするのがポイントです。
カフェインやアルコールを控える
コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれるカフェインやアルコールには利尿作用があります。
これらの飲み物を過剰に摂取すると、尿の量が増え、頻尿を悪化させる可能性があります。頻尿が気になる場合は、 カフェインやアルコールの摂取量を見直してみましょう。 ハーブティーなどノンカフェインの飲み物やノンアルコール飲料に切り替えるのも良い方法です。
お腹の周りを温める
お腹の周りを温めることで、膀胱の血行が改善し、頻尿が改善する場合があります。腹巻やお腹用の温熱シートを使用したり、半身浴で下腹部を温めるのも効果的です。
骨盤底筋を鍛える
骨盤底筋は、骨盤の底にハンモック状に張っている筋肉で、膀胱や子宮などを支える役割をしています。 骨盤底筋が衰えると、膀胱を支える力が弱まり、頻尿や尿漏れのリスクが高まります。
骨盤底筋を鍛えることで、尿道や膀胱を支える筋肉が強化され、頻尿や尿もれの改善につながります。毎日コツコツと続けることが大切です。


漢方の力を借りる
漢方薬には、八味地黄丸(はちみじおうがん)や猪苓湯(ちょれいとう)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)など体の水分代謝や膀胱機能を調整するものがあります。 体質や症状に合った漢方薬を選ぶことが大切なので、 専門の医師や薬剤師に相談しましょう。
尿漏れパッドの活用
頻尿のせいで外出が億劫になっているなら、尿漏れパッドを活用するのも一つの方法です。
最近は、肌に優しい素材や目立たないデザインの商品も増えているので、自分に合ったものを選んでみてください。外出時や運動時の不安を和らげ、安心して過ごせます。
こまめなトイレは逆効果?「膀胱訓練」
頻尿でトイレが近くなると、つい何回もトイレに行ってしまいがちですが、実はこれが逆効果になる可能性があります。こまめな排尿は膀胱を小さくしてしまい、かえって頻尿を悪化させてしまうのです。
この状態を改善するには、「膀胱訓練(膀胱トレーニング)」が有効です。膀胱訓練は、膀胱の容量を徐々に増やしていく方法です。
具体的には、尿意を感じてもすぐにトイレに行かず、少しずつ我慢する時間を長くしていきます。最初は5分ほど我慢してみることを1週間続けてみて、さらに10分、15分と伸ばしていってみましょう。これを繰り返すことで、膀胱の容量が増え、頻尿の改善が期待できます。
ただし、我慢し過ぎると膀胱に負担がかかり、膀胱炎などの感染症を引き起こす可能性があります。痛みや不調を感じた場合は、無理せず中止し、医師に相談しましょう。
頻尿を治すには婦人科?泌尿器科?
頻尿の症状に悩む女性が医療機関を訪れる際、婦人科か泌尿器科どちらの科を受診すべきか迷うことがあります。
結論としては、どちらを受診しても大丈夫です。
婦人科では、頻尿に更年期特有のホルモンバランスの変化が関与しているかを診断し、ホルモン療法やライフスタイルを含めたアドバイスを受けることができます。ホットフラッシュや疲れやすさなど、頻尿の他に更年期症状が気になる場合は、婦人科で相談してみるのがよいでしょう。
残尿感がある場合や、尿が出にくい、尿に血が混じるといった症状がある場合は、泌尿器科の受診が適しています。泌尿器科では、膀胱の過活動や尿路感染症の有無などを検査し、必要な治療を行います。
どの科を受診すべきか迷ったら、まずはかかりつけの医師に相談してみるのも一つの方法です。
ケアと治療でトイレの悩みを軽くしましょう
この記事では、更年期女性に多く見られる頻尿の原因と対策についてお伝えしました。
頻尿は切実な悩みの一つですが、適切なアプローチで症状を軽減し、生活の質を向上させることが可能です。骨盤底筋トレーニングや生活習慣の見直し、漢方などを試しながら、自分に合った方法を見つけていきましょう。