下の血圧が高い原因とは?更年期に知っておきたい生活習慣のポイント
「これまで低かったのに、血圧が少し高くなった」
「特に下の血圧が高いと感じるけれど、更年期と関係があるの?」
更年期にさしかかる女性の中には、こうした血圧の変動に不安を感じる方も多いのではないでしょうか?
特に「下が高い」状態は、放置すると深刻な健康問題につながる可能性があります。この記事では、下の血圧が高くなる原因や更年期との関係を解説し、血圧を下げるための生活のポイントを紹介します。
【40代・50代】更年期に血圧が高くなる理由
更年期の女性はホルモンバランスの乱れやストレスにより、高血圧になりやすいと言われています。
女性ホルモンであるエストロゲンは、血管を広げる一酸化窒素(NO)の産生を促進し、血管を収縮させるエンドセリンの分泌を抑える働きがあります。しかし、エストロゲンの分泌が減少すると、血管の収縮と拡張のバランスが崩れ、血圧が上がりやすくなるのです1)。
また、エストロゲンの低下は自律神経の乱れにもつながり、血圧に影響を与えます。40~50代の女性の高血圧は「更年期高血圧」とも呼ばれ、血圧が不安定であることが特徴です。
そもそも血圧とは?
血圧とは、血液が血管内を流れる際に血管の壁にかかる圧力のことです。
心臓が血液を全身に送り出す力と、血管の拡張や弾力性によって血圧は決まります。血圧は常に変動しており、通常は朝の目覚めとともに上昇し、日中は高くなり、夜間や睡眠中は低くなります。また、冬は気温が低いため血管が収縮し、夏よりも血圧が高くなる傾向があります。2)3)
健康な状態では、これらの要因がバランスを保ちながら血圧を正常範囲内に保ちます。しかし、生活習慣やストレスなどによって血圧が異常に上がることもあり、血圧が上がった状態のことを「高血圧」と呼びます。
「上の血圧」「下の血圧」2つの血圧
血圧には「収縮期血圧(上の血圧)」と「拡張期血圧(下の血圧)」の2種類があります2)3)。
心臓は、収縮と拡張を繰り返して血液を循環させています。
- 収縮期血圧(上の血圧)
心臓が収縮して血液を全身に送り出す際に血管にかかる最も高い圧力
- 拡張期血圧(下の血圧)
心臓が拡張して血液を貯めている間に血管にかかる最も低い圧力
血圧の正常値と高血圧の定義
血圧の正常値は、収縮期血圧が120mmHg未満、拡張期血圧が80mmHg未満とされています。
「高血圧」の診断は、診察室で測った腕の血圧で、収縮期血圧が140mmHg以上になるか、または拡張期血圧が90mmHg以上、あるいは両方を満たす場合になされます。2)3)
高血圧を放置しておくと動脈硬化が進行し、脳卒中や心臓病、腎臓病などのリスクが高まると言われています
更年期女性「下の血圧」が高くなる原因と注意点
下の血圧が高くなる理由の1つとして、末梢の血管の抵抗の高まりが挙げられます4)。更年期女性はエストロゲン分泌の減少により血管の柔軟性が低下するため、拡張期血圧(下の血圧)が高くなると考えられます。
こうした状況が続くと、高血圧による動脈硬化が進行し、心疾患や脳血管疾患のリスクが高まるため、生活習慣の改善が重要です。
血圧を下げる方法は?
高血圧を予防・改善するためには、生活習慣を見直すことが重要です。以下のポイントを日常生活で意識しましょう。
塩分摂取量を控えめにする
塩分を過剰に摂取すると体内に水分が蓄積され、血流量が増加して血圧が上がります。高血圧予防のために、1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが推奨されています。
漬け物や麺類の汁を控えめにし、減塩調味料や香辛料を活用するなど、以下の方法を試してみましょう5)。
ポイント | 具体例 |
塩分の多い食材は水に浸す | 干物や漬物など塩分の多い食材は調理前に水に浸して塩分を抜く |
麺類の汁は残す | 全部残せば2~3g減塩できる |
新鮮な食材を用いる | 食材の持ち味で薄味の調理 |
具だくさんのみそ汁にする | 具沢山にして汁の量を減らすと減塩できる |
むやみに調味料を使わない | 味付けを確かめて使う。事前に塩分表示を確認する。 |
塩分控えめの調味料をつかう | 減塩ドレッシングなどを上手に利用し、使用する量を減らす |
香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する | カレー粉・こしょう・七味・しょうが・かんきつ類の酸味を組み合わせる |
外食や加工食品は頻度や量を控えめにする | 外食や加工食品は目に見えない食塩が多く含まれているため、外食を1回減らしたり、塩分少なめの食品を選んだりする |
カリウムを積極的に摂る
カリウム、マグネシウム、食物繊維、たんぱく質などの栄養素をバランスよく摂取することが血圧管理に役立ちます。
特にカリウムはナトリウムの排出を助け、血圧を下げる効果があります5)。野菜や果物、乳製品、大豆製品を積極的に取り入れましょう。
足腰の筋肉を衰えさせない
足腰の筋肉は血液の循環を助ける役割を果たします。筋肉が衰えると血流が悪くなり、血圧が上がりやすくなります3)。
エストロゲンの低下は、筋肉量や筋力の減少につながることが指摘されているため6)、特に更年期にはウォーキングやスクワットなどの軽い運動を定期的に取り入れ、筋力を維持し血圧を安定させましょう。
温かいお風呂にゆっくり浸かる
湯船に浸かると血管が広がり、血流が良くなります。また、リラックス効果もあり、ストレスを軽減することで血圧の安定に繋がります。
さらに、入浴は疲労回復や、自律神経を整える効果もあるため、おすすめの高血圧対策です2)。
ストレスケア
ストレスは血圧上昇の大きな原因です。日常の中で趣味やリラクゼーションを取り入れ、ストレスを軽減することが大切です。
自分が心から楽しめる時間を作ることで、血圧を安定させる効果が期待できます。
質の良い睡眠をとる
質の良い睡眠は血圧の安定に欠かせません。睡眠不足や不規則な生活は、血圧上昇を引き起こす原因となります。
規則正しい生活を心がけ、リラックスできる環境で十分な睡眠を取ることが大切です。自分好みのアロマオイルを活用するのも効果的でしょう2)。
更年期の高血圧は治る?どんな時に医師に相談?
生活習慣を改善しても血圧が高いままの場合は、早めに医師に相談することが重要です。
高血圧は放置すると動脈硬化が進み、心臓病や脳卒中などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。しかし、早期に対処することで、リスクを大幅に軽減できるでしょう。
血圧に問題がない人も、血圧が変動しやすい更年期以降は、自宅で定期的に血圧を測り、記録を残す習慣をつけましょう。血圧の変動が気になる場合は、体調や疲れ、ストレス、睡眠状態なども併せて記録することが重要です。自分がどういう時に血圧が高くなりやすいか、傾向をつかむことができるかもしれません。
自宅での血圧と体の状態をもとに医師に相談すれば、適切な治療を早めに受けることにつながり、長期的な健康リスクを回避できる可能性が高まります。
1)前田ら(2011).女性における加齢および更年期の血管系に及ぼす影響.日老医誌48:158-162.
6) 茂木ら(2019). 中年勤労女性の閉経前後における生活習慣と関連因子の比較〜性ホルモンとの関連〜. 日本職業・災害医学会会誌, 67(1), 22-29.