なぜ更年期にコレステロールが高くなる?【女性ホルモン】が改善の鍵
運動をして、食事にも気を付けている……
努力しているのにコレステロール値が下がらないどころか前回より上がっている?
もしかしたらその原因は「女性ホルモン」の影響かもしれません。
総コレステロールが200超えで怒りが止まらない50代女性
一体どうしたら低くなるんですか?
お薬が増量・変更になった患者様や、採血の結果が悪い、改善されないなどの理由で医師から「生活習慣を見直しましょう」と言われた患者様の定番フレーズです。
内科からの処方箋を持参された50代の女性は、コレステロール値が前回より高くなり、脂質代謝異常の薬が増量になったようです。
高校生の息子がいるので、私が食べるメニューだけ油を使わないように作っているし、スポーツジムに行って運動もしているし、お菓子も大好きなパンも控えているのに……
これ以上どうしたらいいんですか?
これだけ頑張ってるのにこの検査結果やったら、怒りから失望へと変わるのも無理ないな
その女性はスタイルも良く、品の良い女性です。
一方でかなりストイックな方で、薬局に来るたび「いかにコレステロール値を減らす工夫をしているか」について話してくださいます。長年薬剤師をしていますが、ここまで取り組んでおられる方は稀なタイプです。
更年期のコレステロールの相談は婦人科で!?
まずは婦人科に行ってみてください
そこで血液検査をしてもらって、それからこの薬が必要か決めていきましょう
何おかしなこと言ってるんですか?ふざけないでください!
いくら素人の私だってどこの病院行っても採血の結果は同じことくらいわかっています
それとも薬剤師さんは婦人科で採血したらコレステロール値が下がるとでもおっしゃるんですか?
まさに火に油を注ぐ状態!早く鎮火しないと大変や
この患者さんだけではなく、「怒り」をぶつけてこられる方は、大抵強い不安を感じておられます。
実は私も40歳過ぎた頃から、採血結果でコレステロール値だけが急に高くなったんです
年相応に下腹部はたっぷりしていますが、上半身は華奢に見えるお得な骨格の私は以下のように話始めました。
えっそうなんですか?どうやってコレステロールを下げたんですか?ダイエットされたんですか?
私は彼女の地雷を踏まないように、言葉を選びつつ説明しました。
コレステロール値と女性ホルモンの関係
コレステロールのことを婦人科で相談したんですよ
コレステロールと女性ホルモンは関係してることがあるから
だから何で婦人科なんですか?内科じゃないんですか?
コレステロール値は生活習慣病の指標の一つなので、生活習慣の乱れが原因の場合が多いのですが、女性はホルモンの影響で高くなることもあります。
高脂血症(以下、脂質異常症と呼びます)は、冠動脈疾患や脳梗塞などの動脈硬化により引き起こされる病気の代表的な危険因子です。
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」によると、食生活などの生活習慣の改善といった薬以外の治療法を基本としつつ、薬物療法ではスタチン系薬を中心に、フィブラート系薬、エゼチミブ、プロブコール、多価不飽和脂肪酸、オメガ-3脂肪酸エチルなどが使用されると決められています。
よく患者様から「コレステロール値が高いのがなぜいけないのか?痛くも痒くもないのに」と質問されます。
その答えは、コレステロールが高い状態を放置していると、知らないうちに血管が傷つき、動脈硬化が進行、脳や心臓の血管が詰まるという怖い疾患につながるおそれがあるからなのです。
更年期に《LDLコレステロールが高くなる》原因は?
動脈の血管壁が厚くなったり、硬くなったりして血液の流れが悪くなる動脈硬化。その主な原因の一つがLDLコレステロールが高い場合です。
他に、アルコールや脂肪、糖質の摂り過ぎによって、中性脂肪が高い場合も血管に傷がつき、非常に高い状態が続くと、激痛を伴う急性膵炎を発症したり、糖尿病の合併もおこりやすくなります。
日本人の血清脂質調査によると、男性の場合、LDLコレステロール値の推移に特徴的な変化は見られないのですが、女性の場合、50歳より前では、男性よりLDLコレステロール値が低いのに、50歳ごろより急激に上昇し、男性よりその値が高くなります。
また中性脂肪も同様に女性の場合40歳前では男性より値が低いのですが、40歳以降になると上昇し、その値は男性よりも高くなります。
つまり、閉経前後に脂質代謝に変化が起こりやすいのです。その理由の一つに女性ホルモン(エストロゲン)の低下が関連しています。
最近の研究では、エストロゲンには脂質代謝や血管機能の改善効果があると証明されています。ここでようやく私が最初に話した「婦人科を受診してください」につながるのです。
更年期にコレステロールを下げる方法【ホルモン補充療法】
採血の結果や問診より、コレステロール値の改善を期待して、婦人科医師がエストロゲンを補充する方法をすすめる可能性があります。
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期障害の代表的な治療方法です。
骨粗鬆症の予防に効果的と言われていますが、女性に特化した動脈硬化性疾患発症予防の為の治療法としてHRTが注目され研究が進み、更年期の女性が生活習慣の改善とHRTを同時に行うことで改善される1という報告がありました。
コレステロール対策3本柱~運動&食事&婦人科で相談~
日本の女性が罹る冠動脈疾患発症率は欧米と比較してかなり低いと言われています。
しかし食生活の欧米化、生活が便利になり運動不足になりがちな現代社会では、今後発症率が欧米並みになってくるのではないかとも言われています。
また女性は男性と比較して長生きであり、生涯動脈疾患発症リスクが高くなります。そのため、運動や食事といった生活習慣の見直しが必要です。
いきなり婦人科を受診することに躊躇いがあるかと思いますが、
婦人科検診も兼ねてかかりつけ医を探しておかれてはいかがでしょうか?
きっと今までの努力が報われる時がくると思いますよ
最後に私が先ほどの女性にお伝えした言葉です。
- 「女性の動脈硬化性疾患発症予防のための管理指針2018年度版」診断と治療法 2018 ↩︎