【薬剤師】岡下真弓
〜最近喉の詰まりや違和感を感じていませんか?意外かもしれませんが、実は喉の症状も更年期障害のひとつにあるのです。薬剤師の岡下さん解説します〜
みなさんこんにちは。薬剤師の岡下真弓です。【薬剤師の体験談】シリーズは私がこれまで患者さんと接してきた経験の中で、とくに印象的だった方のエピソードをご紹介し、その体験から得た学びやメッセージをみなさんにお届けしている連載です。
「またこの人だ」心の中で呟いてしまった。
ほぼ毎週耳鼻科の処方箋を持参され、さらに眼科と整形外科の処方箋も毎月持参される50代前半の女性。
薄化粧で、髪は染めておらず、明らかに仕事帰りとわかるスタイルで、いつも閉店間際に来られます。
終始無言で、ずっとうつむいたままの彼女。コミニュケーションの取り方が難しく、毎週来られるのに、ただお薬を渡して終わってしまいます。
しかし今日は新しく抗生剤が長期で処方されていました。
「よし!今日こそチャンスだ!」頭の中でストーリーを描きつつ、私はカウンターに向かいました。
抗生剤は細菌の感染を予防するために処方されるため、喉・鼻・気管支など呼吸器系の感染症や、ぼうこう炎など尿路系の感染症、抜歯・手術後などの方に投与されます。
数多い抗生剤の中でも、ある種類の抗生剤は、後鼻漏(粘りのある鼻水が喉の奥を流れる、痰がからむ、咳が止らないなどの症状)の症状がある場合長期で服用されます。
今回この抗生剤が長期で処方されていたので、私は「今日は新しいお薬が処方されていますが、鼻が詰まった感じが続くのですか?」と聞いてみました。
すると「いえ、鼻ではなく喉が詰まっています。」ぼそっとその女性がおっしゃったのです。
最近、喉の詰まりを訴える方が増えています
喉の違和感は生命に関わらないため、病院を受診される方が少ないのですが、症状が長く続くと「何か悪い病気でないか」と不安になり、ドクターショッピングを繰り返す原因になっています。
今日はこの喉のつまりについてお話しましょう
喉の異常な感じが出現します。
症状の感じ方は、何かが引っ掛かっている感じ、圧迫感、イガイガ感などさまざまです。
喉の違和感だけでなく舌の違和感を訴える場合もあります。
一般的には、アレルギー性鼻炎や後鼻漏を伴う場合や *1)基質的原因がない場合を言います。鼻やのどの検査(内視鏡検査、X線検査、CT検査など)をしても、異常が見つかりません。
*1)器質的疾患:臓器そのものに炎症や癌などがあり、その結果として様々な症状が出現する病気や病態のこと。臓器そのものに異常があり、症状が出ている疾患のため、検査を行えば必ず症状の原因となる異常が見つかります。
ストレスによって、喉から胸にかけての違和感・異物感・圧迫感などが生じます。
何か症状があれば「身体に原因があるはず」と考えがちですが、私の連載を読んでくださっている皆さんならば、ストレスの影響で自律神経・ホルモンのバランスが乱れ、身体に様々な症状をおこすことはよくあることだとご存知ですよね。
鉄欠乏性貧血や自律神経失調症、更年期障害、糖尿病などが原因の場合もあります。
今回お伝えしたいのは、更年期障害の一つに咽喉頭異常感症が含まれていることです。
喉の違和感で婦人科を受診する方はほとんどいないでしょう。
大概の方は、この女性のように耳鼻咽喉科を受診されます。
そして様々な検査を繰り返し、「異常がない」と言われ、漫然と薬が投与され続けます。
ホルモンバランスを含む「身体的要因」と親の介護、子供の自立、定年問題などの社会的環境変化を含む「心理的要因」が合わさって、喉の違和感が現れると言われています。
そこで私はこの女性に漢方薬を提案しました
なぜならば漢方では、このような症状を「梅核気」と呼び「気が上逆して咽喉を塞いでしまう病」と考えます。
梅核気は「気」の巡りが悪い「気滞」によって起こる症状と捉えられています。そのため、気を巡らす治療をしていくのが一般的です。
しかしこの女性は「医師の処方した薬以外は服用しない」とおっしゃったので普段の生活で取り入れられる方法を提案しました。
タブレットでもガムでもなんでも構わないので、ミント味のものを選んでくださいとお伝えしました。
ミントは薬膳では、滞っているものを発散させ、気血の流れをよくすると言われています。
香りが気分をリフレッシュさせるので、イライラした時にもおすすめです。
最後に「胃に不快感がありませんか」と確認しました。
なぜならば
・胃の内容物が喉へ逆流して直接喉を刺激する
・食道に逆流した胃酸の影響
の場合も喉に影響し耳鼻科では確認されない項目だからです。
最後にこれら以外に喉の違和感を感じる疾患として、
骨格筋障害(例: 重症筋無力症、筋強直性ジストロフィー、自己免疫性筋炎)、食道圧迫を引き起こす頸部または縦隔の腫瘤病変などがあります。
長引く喉の違和感が続く場合は、一度病院で検査をしてくださいね。
さまざまな年齢層や症状を抱えた患者様が来られる薬局では、1枚の処方箋から様々なストーリーが見えてきます。
おせっかいと思われがちですが、今よりきっと良くなる方法があるはず。
そう考えて私はお薬をお渡しするだけでなく、様々な方法をご提案しています
今回の話が誰かのお役に立ちますように。
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