【質問】更年期の症状を抑える薬はありますか? 代表的な薬と、選ぶ時の注意点があれば教えてほしいです。
質問
更年期の症状を抑える薬はありますか? 代表的な薬と、選ぶ時の注意点があれば教えてほしいです。(ホルモン補充療法(HRT)の種類、それぞれのメリット・デメリットを想定しています)
回答
まず更年期症状の治療の基本は、原因の究明から開始します。
症状が主として精神症状の場合には、悩み、家庭問題など、精神的ストレスの主要因となる環境や生活背景などの話をしっかり聞く対話療法により、症状が緩和することもあります。その後も不安や不眠、頭痛、うつ症状などが長く続く場合には、抗不安薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、向精神薬を投薬することがあります。
一方、ほてりや発汗、記憶力低下、関節痛、乾燥感など、エストロゲン欠乏が直接的な原因となっている症状には、ホルモン補充療法(HRT)や漢方療法があります。HRTには経口剤、経皮剤、膣剤などがあります。経口剤は低用量で、使用期間など遵守すれば安全性も高いですが、静脈血栓症・血栓症、乳がん発生のリスクが懸念されるため、現在は経皮剤の使用が増えてきています。経皮剤は経口同様の効果が得られる一方、経口剤で懸念されるリスクは低く、また服用による嘔気などの副作用の心配もありません。さらに動脈硬化や脂質上昇の抑制効果もあります。なお、症状のうち全身症状があまりなく、膣乾燥感が主である場合は膣剤の使用が一般的です。
ただしHRTは、年齢や既往歴など禁忌項目や複数の慎重投与項目に該当するものがあると積極的な投与が受けられない場合があるので、主治医に一度確認が必要です。
こうしたHRTは、閉経以前で、規則的な月経を有する女性には第一選択とはならず、まずは漢方薬や生活指導がおこなわれます。漢方の処方をおこなう場合は、虚証か実症かを分類したり、主症状から選択します。主に更年期症状に対しては当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸が使用されますが、3~6か月ほど処方しても効果がない場合は、別の漢方への変更も勧められます。また、規則的な生活、栄養のバランス、適度な運動、趣味などの活動をおこなうこともよいとされているため、こうした生活指導と共に経過観察することもあります。
(C)Adobe Stock