生理用ナプキンが手離せない女性の話

記事更新日: 2021/01/07 TRULY編集部

【薬剤師】岡下真弓

  • 生理用ナプキンを定期的に購入する60代の女性

  • 糖尿病治療薬の処方箋を持参される、ふくよかな60代の女性。その方はいつも黙って処方箋と共に、店頭の片隅においてある生理用ナプキンも差し出します。

  • バラエティー豊かに陳列されているドラッグストアと違い、勤務先の調剤薬局には1種類しか在庫していない生理用ナプキン。今やコンビニエンスストアでも購入できるため、ほとんど売れることもなく、その女性のために仕入れていたようなものでした。

  • 60代の女性と言えば、一般的には生理用ナプキンは必要のない年齢です。もし出血が続いているならば重要な疾患が隠れているかもしれないため、言葉を選びつつ、私は勇気を出して「尿漏れパッドも仕入れました。」と案内してみました。が、言葉少なに「これでないとダメなんです」と返答されました。

  • 尿漏れに悩む女性が、生理用ナプキンを購入するケースが多いためこのような会話をいたしましたが、この女性はそうではないようです。


  • 閉経後の女性が出血する理由とは?

  • 生理用ナプキンでないといけないのは、やはり出血があるのでしょう。閉経後の女性が出血することは何か要因があると推測できます。

  • そこで私は「何かここに(股に手をあてて)あたるような感覚がありますか」ときいてみました。

  • その女性はトイレの回数が急に増えたこと、しかしスッキリしないことなど訴えられました。泌尿器科で薬をもらってもまったく改善しないそうです。

  • 私は念のために婦人科受診をすすめたのですが、店舗を移動してしまったため、その女性がその後どうなされたかわからないままです……。


  • その症状、「骨盤臓器脱(POP)」かもしれません。

  • この女性だけではなく、「下腹部に違和感がある」「お風呂で股を洗っていると何かが当たる」「尿意をもよおしてトイレに行くも、すっきりしない」「排尿できない」「立つとお腹の中で何かが下がって、座ると中に収まる感じがして気持ち悪い」「午前中は何ともないが、午後になると不快感がある」このような症状を訴える方は多くおられます。

  • これらの症状を訴える方は骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse: 以下POPと略します )が考えられます。

  • POPは、膣のヘルニアと呼ばれ、骨盤底臓器(子宮・膀胱・尿道・小腸・直腸)などが、膣に垂れ下がり、膣の外に出てしまうのです。そしてほとんどの方は複数の臓器が垂れ下がり、様々な症状を訴えられます。


  • 骨盤臓器脱とQOLの関係

  • 骨盤底臓器は、排尿機能、排便機能、性機能など女性の大切な機能を担っているため、QOL(Quality of Life;病気を治療だけでなく、前向きな気持ちで日々を暮らしていけるよう、生活の質を高めること)に大きく影響します。

  • POPは、進行性の疾患であり、他の疾患と違い「早期発見・早期治療」が当てはまらず、医療従事者がこの疾患を知識として身につけ、心理的サポートを行うことが必要なのです。


  • 子宮は年齢と共に落ちてくる?

  • 余談ですが、以前働いていた総合病院前にある調剤薬局での話です。

  • 高齢の女性に婦人科から処方された膣坐剤の説明を行った若い薬剤師が、調剤室に戻ってくるなり私にむかって「子宮って落ちちゃうんですか?」と目を丸くして話していたことがあります。

  • 「子宮を支えているのは筋肉だからね、年齢とともに緩んじゃうのよ」と私は答えました。

  • 恐らく子宮脱治療中、膣の炎症をおこしたのでしょう。


  • POPを発症する理由と、種類

  • POPは更年期以降に発生し、妊娠や出産、肥満や加齢などが主な原因と言われています。

  • 骨盤の下の方は骨盤底と呼ばれ、お腹や骨盤内の内臓を支えているのですが、その骨盤底が分娩や外科手術やその他の原因によって、内臓を支えきれなくなるのです。

  • 分娩時に赤ちゃんが骨盤内を通過するときに骨盤底が損傷される方がおられますが、この場合分娩後すぐに発症せず、閉経を迎える頃から多くなり、60歳代にピークを迎えます。


  • 子宮脱

  • 子宮が腟の中に垂れ下がった状態をさします。子宮を支える結合組織や靱帯が弱くなることで発生します。

  • 子宮脱が起きると、腰や尾骨の辺りの痛み、排便困難、性交時の痛みのほか、重感や圧迫感(骨盤内臓器が垂れ下がっているような感覚)が生じます。しかし、何の症状もみられない女性も多くいます。

  • 子宮全体が脱出すると、歩行時に痛みを感じるようになることがあります。突出した子宮頸部(子宮の下部)にただれが起きると、出血、分泌物、感染などの原因になります。

  • 子宮脱によって尿道がねじれてしまうこともあります。尿道がねじれると、尿失禁が起きても分からなかったり、排尿が困難になったりします。


  • 腟脱

  • 腟の上部が下方に下がり、腟が裏返しになった状態です。腟の上部が腟の途中まで下がってくる場合もあれば、完全に体外に脱出してしまう場合もあります。通常、膀胱瘤または直腸瘤も同時にみられます。

  • 腟全体の脱出では、座っているときや、歩いているときに痛みを感じることがあります。腟の突出した部分にただれができると、出血や分泌物の原因になります。

  • 腟脱によって尿意が強まったり頻尿になったりすることもあります。尿道がねじれてしまうこともあります。尿道がねじれると、尿失禁が起きても分からなかったり、排尿が困難になったりします。排便が困難になることもあります。


  • POPの治療方法

  • この項では、POPの治療方法をいくつかご紹介します。

  • 対症的管理

  • パッド類で保護し、軟膏など外用薬で粘膜を保護します。

  • 腹圧のかかる仕事の時は、パッドをあてた上からガードルや膣の膨隆矯正用の下着を着用し、膣に蓋をするようにします。

  • POPがあると、無意識に姿勢が悪くなり、腰痛・肩こりなど慢性化しやすくなるので、ヨガ・ピラティス・バランスボール体操などがオススメです。


  • 非観血的整復

  • ペッサリーの挿入を行い、定期的に医療機関を受診します。

  • 連続使用すると、膣のびらんがおこりやすくなります。

  • 長期的着用が必要で連続装用される場合は、日中のみ使用し夜間は外すなど、自己着脱を行う必要があります。また性交時には外す必要があります。


  • 手術

  • ペッサリーを試しても症状が続く場合やペッサリーの使用を希望しない場合には、手術を行います。

  • 手術方法は腟式手術、腹式手術、開腹手術、腹腔鏡下手術などがあります。

  • 腟脱が重度で、患者が性活動を望んでいない場合、腟閉鎖術があります。

  • 腟の粘膜の大部分を切除し、腟を縫い合わせて閉じます。処置に時間がかからず、合併症がほとんどないため、手術にリスクを伴う病気(心疾患など)がある女性には良い選択肢となります。また、腟閉鎖術の後、脱出が再発する可能性は低くなります。


  • 運動

  • ケーゲル体操という、腟、尿道、および直腸の周囲にある筋肉(尿の流れを止める際に使用される筋肉)を対象とした運動です。

  • 腹圧性尿失禁などの不快な症状を和らげることができますが、POPの治療法としては効果がなく、骨盤底筋を強化するために行います。


  • 方法

    • 1回の運動:5秒から10秒くらい行いましょう。
    • 穴をすぼめるようなイメージで尿道や腟、そして肛門を締めます。おならを我慢するような感じです。
    • 骨盤底筋をギュ―と締めながら、骨盤底筋を頭の方向に引き上げます。
    • 1・2・3・4・5・6・7・8、と数えます。締め続けながら、さらにギュ、ギュ、ギュと3回、固く締めてください。
    • 同じくらい休みましょう。
    • 約10分間にわたり繰り返します。1日に数セットを目安にしましょう。
    • 座った状態でも、立った状態でも、横になった状態でも可能です。

  • 最後に

  • 冒頭の女性がPOPであったかどうか定かではありませんが、POPは骨盤底臓器が脱出し、下着等ですれて出血の原因になります。また前回お話したエストロゲンの低下に伴う膣の乾燥と同時に、性交困難や性交痛の原因にもなります。

  • 直接生命に影響することは少ないですが、明らかにQOLを低下させ、心理的負担も大きい症状です。しかし、実際には、恥ずかしさから受診をためらう患者さんが多い疾患でもあります。

  • まだまだ先の話しかもしれませんが、更年期を迎えられる皆様方に知っておいて頂きたく思い、今回はお話させていただきました。

公式LINEで記事を配信中!

友達追加友だち追加

【薬剤師】岡下真弓

フリーランス薬剤師。JAAアロマコーディネーター協会認定講師。化粧品メーカー研究開発や薬剤師の知識を生かし、女性の健康と美容をテーマにした講演活動を行っています。 歳を重ねるにつれ、衰えや失われていくものはあります。また更年期世代は仕事で負う責任が大きくなり、後ろ向きな気持ちになりがちです。私は人の美しさとは、その人の生き方次第で変えることが出来ると多くの患者様から教わりました。「歳を重ねる事をネガティブに捉えずセクシーに健康に楽しみましょう」

・このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません。

・専門家の皆様へ:病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。

カテゴリ一覧

TRULYについて

TRULYのコンセプト

- 私たちの想い -

もっと見る

医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療ではなく、正確性や安全性を保証するものでもありません。適切な診断・治療を求める場合は、医療機関等を受診してください。本サービスの情報や利用に際して発生した損害について、当社は一切の責任を負いかねますので、予めご了承いただきますようお願いいたします。