「声がかすれる」のは更年期のせい?将来の健康リスクとセルフケア

第2の声変わり? 更年期の声の変化 かんたんチェック
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最近

「声がかすれる」「声が枯れやすい」「聞き取りづらいと言われた」

などのお悩みをお持ちではありませんか?

感染症の流行によるマスク装着や在宅ワークの普及が進み、人と直接話す機会が減っています。その影響で、声を出す頻度が少なくなり、のどや声帯の機能が低下しやすくなります。

また、更年期には喉や声帯の変化も訪れます。このまま放置すると、将来的には嚥下障害や誤嚥性肺炎につながるリスクが全くないとはいえません。

今回は、更年期に声がかすれる原因とその対策ついて解説します。

目次

更年期に「喉が痛くないのに声がかすれる」原因

更年期には、体全体にさまざまな変化が現れますが、喉や声帯も例外ではありません。

喉が痛くないのに声がかすれる原因について、詳しく解説します。

女性ホルモンの減少

女性の場合、閉経後に声を出すのに重要な声帯周囲の筋肉の衰えが目立ちやすくなります。12

これは、更年期に女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が大幅に減少し、声帯や喉周りの筋肉が十分に潤いや弾力を保てなくなるためです。

この変化により、のどの粘膜や声帯がむくみやすく、声がかすれたり高音が出しづらくなったりする症状が現れます。[1]

加齢による声帯の変化

声のかすれは「第2の声変わり」ともいわれる加齢による変化で、特に50歳ごろから声帯の筋肉や粘膜の萎縮が進行します。[2]

声帯は筋肉の一部で、発声によって鍛えられるものです。しかし、40代以降は何もケアをしない場合、年に1%程度の筋力低下が進むと言われています。[1]

加齢に加えて、近年、感染症対策としてのマスク装着や在宅ワークの普及により、人と話す機会が減少しました。それに伴い、声を出す頻度が減り、声帯や喉周りの筋肉を使う機会が減り、声のかすれや喉の不調につながるリスクが増しています。

ストレスの影響

ストレスは、更年期における声の不調や喉の違和感を引き起こす要因の1つです。特に、更年期に多く見られるホルモンバランスの変化は、自律神経の働きにも影響を及ぼします。

自律神経が乱れると、喉周りの筋肉が緊張しやすくなり、発声に必要な筋肉がスムーズに動かなくなることがあります。その結果、声がかすれたり、喉に詰まったような違和感を覚えることが多くなります。

また、声がうまく届かないことで聞き返されたり、うまく発声できなかったりすると、ストレスがさらに増幅され、悪循環に陥ることも珍しくありません。

病気が隠れている可能性も…何科を受診?

声がかすれる症状の背後には、更年期によるホルモンバランスの変化だけでなく、病気が潜んでいる場合もあります。このような場合、早めの対応が重要です。3

喉や声帯に影響を及ぼす病気として考えられるのは、以下のようなものが挙げられます。

  • 声帯ポリープ:声の酷使や喫煙などが原因で声がかすれる
  • 喉頭がん:初期症状として声がかすれる場合がある
  • 反回神経麻痺:突然声がかれる、息が抜けるような声になる
  • 胃食道逆流症:胃酸が喉に逆流して声帯を刺激し、声のかすれや喉の違和感を引き起こすことがある

これらの場合、セルフケアでは改善が難しいため、症状が続いたり悪化したりする場合は、耳鼻咽喉科を受診し、専門医から適切な治療を受けましょう。

《メンタル・肺炎》声のかすれが将来に及ぼすリスク

声のかすれは、更年期以降に放置すると、さまざまな健康リスクにつながる可能性があります。

声帯の筋力が低下すると、飲み込む力も弱まり、食べ物や飲み物が誤って気管に入りやすくなります。これを「誤嚥(ごえん)」といい、場合によっては肺に炎症を引き起こす「誤嚥性肺炎」につながることも珍しくありません。

また、会話の機会が減ると、話す意欲を失い、社会的なつながりが薄れる「メンタルフレイル」に陥るリスクも増します。フレイルとは、体や心の機能が加齢や病気などによって低下してしまった状態を言います。

さらに高齢期には声がしゃがれる老人性嗄声(させい)も加わり、生活の質を低下させる要因となるため、更年期から声や喉のケアを始めることが大切です。[1]4

声のかすれを悪化させる?3つのクセを改善

声のかすれは、更年期の体の変化だけでなく、日常的な習慣によっても悪化することがあります。特に、喉や声帯に負担をかけるクセを放置すると、声の不調が長引くだけでなく、将来的な健康リスクにもつながりかねません。

ここでは、声のかすれを悪化させる3つのクセを改善し、喉や声帯を守るためのポイントを解説します。

口呼吸をやめて鼻呼吸を意識

口呼吸は喉を乾燥させやすく、声帯に大きな負担をかける原因になります。乾燥した環境では、声帯が正常に振動しづらくなり、声のかすれが悪化しやすくなります。5

特に就寝時は、加湿器を使用して部屋の湿度を保つことや、鼻呼吸をサポートする専用の鼻呼吸テープを活用するのがおすすめです。

大声や咳払いを控える

頻繁な咳払いは、声帯に強い衝撃を与え、炎症や小さな傷を引き起こすことがあります。これを繰り返すと、声帯に過剰な負担がかかり、声がかすれる原因となることがあります。また、大声で話したり叫んだりすることも、声帯を酷使し、負担を増やす要因です。[1]

喉にイガイガ感を覚えた際は、咳払いを繰り返すのではなく、水分をこまめに摂取したり、のど飴で喉を潤すよう習慣づけましょう。

猫背を直して姿勢良く

猫背になると、呼吸が浅くなり、声帯に十分な空気を送り込みづらくなります。その結果、声が不安定になり、声のかすれを引き起こしやすくなります。

日常生活では、姿勢を意識して整えることが大切です。特にデスクワーク中は、背筋を伸ばすことを心がけましょう。また、ヨガやストレッチを取り入れると、体の柔軟性が高まり、姿勢改善に役立ちます。

「声の老化」をテストで確認

声の老化を簡単に確認できる方法に、「ロングトーンテスト」があります。このテストは、喉や声帯の健康状態を把握するのに役立ちます。

まずは、静かな場所で「あー」と声を出し、どれだけ長く安定して持続できるかを測ります。声を出している間、声の揺れや息切れがないかにも注目してみてください。

健康な状態では、20秒以上声を伸ばせることが目安とされています。20秒より短く、声が途切れがちであれば、声帯の筋力低下や喉の疲労が疑われます。

セルフチェックを定期的に行い、声の変化に気を配りましょう。

更年期に声のかすれを防ぐ【5つのセルフケア】

日常生活でのセルフケアにより、声帯やのど周りの筋肉低下の予防・改善が期待できます。以下、喉や声帯を守るために取り組みやすい5つの方法を紹介します。

①のどをうるおす習慣&環境

喉や声帯の健康を保つためには、日常的に潤いを意識したケアが重要です。[4]

まず、起きたら口をゆすぎ、1杯の水を飲んで喉をしっかり潤しましょう。朝食にはヨーグルトやスープ、フルーツなど水分が多く含まれる食品を取り入れることで、喉の潤いを補えます。声帯や喉周りの筋肉を健やかに保つためには、「保湿」が最も大切なポイントです。

また、話をしていない時は、マスクの着用で喉の乾燥を防ぐ効果が期待できます。特に冬場やエアコンが効いた部屋では、加湿器を使用して室内の湿度を適切に保つのもおすすめです。

②のどを酷使しない

声帯は、日常的な使い方次第で大きな負担がかかることがあります。

特に、朝起きたばかりの声帯はまだ完全に目覚めておらず、緊張している状態です。起床後すぐに大声を出さず、可能であれば、起きて4時間程度かけて徐々に声を出すようにしましょう。最初は軽い会話や短い発声から始め、声帯をゆっくり慣らすことが大切です。

また、日中もなるべく大声や絶叫は控えることが喉や声帯を守るポイントです。声を出す際には無理をせず、適度に休息を取りながら、喉に過剰な負担をかけないよう心がけましょう。

③かんたん発声トレーニング

声帯を健やかに保つためには、無理のない範囲での発声トレーニングが有効です。特に、朝起きてすぐは声帯が準備できていないため、まずは軽い運動から始めましょう。

最初におすすめするのは「ハミング」です。口を閉じて鼻歌のように軽く歌うことで、喉を緊張させずに発声の準備運動ができます。さらに、声を出す前に「のどぼとけ」を指でつまみ、円を描くようにやさしく30秒ほどマッサージすることで、喉の筋肉をリラックスさせることができます。

次に、簡単に取り組める「ストロー発声法」を試してみましょう。ストロー1本を用意し、水を入れたペットボトルまたはコップに差し込み、5秒間かけて息を吹き込みます。これを10回×3セット行います。

また、湿度が十分にある浴室は、喉に優しい環境です。入浴中に童謡など音域変化のある曲を歌うと、声帯のストレッチに役立ちます。[4]毎回同じ曲を歌うことで、自分の声のコンディションチェックにもなるでしょう。

④ストレスを溜め込まない

ストレスは喉や声帯に悪影響を及ぼし、声のかすれや不調の原因となります。そのため、日常生活でストレスを溜め込まない工夫が大切です。

深呼吸や瞑想、軽いストレッチなどでリラックスする時間を設けると、自律神経のバランスを整える助けになります。また、趣味を楽しむことで気分がリフレッシュし、心身ともにリラックスできます。

これらの工夫は喉や声帯を守るだけでなく、全身の健康維持にもつながります。自分に合ったリラクゼーション方法を見つけて、無理のない範囲で取り入れてみましょう。

⑤食生活の工夫

声帯の健康を守るためには、日々の食生活を見直すことも重要です。特に、抗酸化作用のある食品やサプリメントを取り入れることで、声帯に悪影響を与える活性酸素を中和し、声帯の維持に役立てることが期待できます。[4]

抗酸化食品としては、ビタミンCを多く含む柑橘類やイチゴ、ビタミンEが豊富なナッツ類、βカロテンが含まれる緑黄色野菜などが挙げられます。また、ポリフェノールを含むお茶や赤ワインも抗酸化作用が期待できる食品です。これらを日常的に摂取することで、喉や声帯への負担を軽減できます。

必要に応じ、抗酸化サプリメントを活用するのも一つの手です。ただし、サプリメントは補助的な役割にとどめ、バランスの取れた食事を基本とすることが大切です。

更年期に「声のかすれ」をケアして将来の健康リスクを減らそう

更年期の声のかすれは、体の変化だけでなく、日常の習慣や生活環境も影響します。適切なセルフケアを行うことで、声の不調を防ぎ、将来の健康リスクを軽減できます。

喉や声帯の潤いを保つ保湿ケアや、声帯に負担をかけない発声、ストレスを溜め込まない生活習慣を取り入れることが重要です。

更年期に声の変化に気づいたら早めにケアを始め、健康的な声を維持しましょう。

参照元

  1. 渡邊雄介,マスクをするなら「声筋」を鍛えなさい,晶文社 ↩︎
  2. 「第121回日本耳鼻咽喉科学会総会シンポジウム」健康長寿のための音声の維持 ↩︎
  3. 富山県立中央病院|かれ声になる病気 ↩︎
  4. 声帯萎縮症 ↩︎
  5. 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター|声帯萎縮とは ↩︎
第2の声変わり? 更年期の声の変化 かんたんチェック

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この記事を書いた人

髙橋マキのアバター 髙橋マキ 【看護師】

・認定フェムテックシニアエキスパート(日本フェムテック協会認定資格1級)
・化粧品検定2級

看護師歴28年
都内の総合病院を中心に、循環器内科・ICU・CCUなどで勤務。切迫流産のため120日間の入院生活を経験。
育児・引越しを機に、キャリアチェンジを行う。ライフステージの変化に伴い、女性には多くの健康課題があることを痛感。
多くの女性の課題解決につながるよう、情報発信を行なっている。

このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません。

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