更年期による手足のしびれ|原因や治療法・セルフケアを徹底解説
「最近、手足がピリピリしびれるようになった」
「触った感覚が鈍くなった気がする」
という更年期世代の女性は少なくないのではないでしょうか。
45歳から55歳の女性は、女性ホルモンの分泌が減少し始める「更年期」を迎えます。更年期は、心身ともにさまざまな変化が起こりやすく、不調を抱えることが多い時期です。その中でも、手足のしびれは、更年期の不調の1つといえます。
この記事では、更年期による手足のしびれの特徴や原因、セルフケア方法を詳しく解説します。
更年期によるしびれの症状とは?
更年期に経験しやすい手足のしびれには、以下のようにいくつかの特徴があります。
- 手足のしびれ:手や足にピリピリした感覚が生じ、軽い痺れやしびれ感が続くことがある
- 手足の感覚の鈍化:手足の一部が少し鈍く感じたり、物に触れた感覚が薄くなったりすることがある
- 皮膚表面のピリピリ感(刺激感):皮膚の表面がむずむずと感じたり、軽く刺激を受けたようなピリピリ感が発生することがある
これらの症状は一時的な場合もありますが、ひんぱんに繰り返したり悪化したりすると、生活に大きな支障をきたす可能性があります。そのため、早めに自分の症状を把握し、適切な対策を検討することが大切です。
更年期に手足のしびれが起こる原因
更年期の手足のしびれが起こる原因には、ホルモンバランスの変化が影響していますが、病気が隠れている可能性も全くないとはいえません。
ここでは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
ホルモンバランスの変化
更年期とは、閉経をはさんだ前後5年間、約10年間にわたる期間を指します。12
この約10年間の間、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が大きく変動し、身体的・精神的にさまざまな症状が現れます。
ただし、症状の程度や現れ方には個人差が大きく、あまり症状を感じない人もいるでしょう。
エストロゲンの減少によって、以下のような体の変化が起こり、しびれの原因となることがあります。
- 自律神経の乱れ→血行の悪化
- 筋肉量・骨量の減少→神経の圧迫
- 皮膚の乾燥→刺激に過敏になる
ホルモンバランスの変化により自律神経が乱れ、血流の調整がうまくいかなくなります。また、エストロゲンの分泌量低下により、筋肉や骨の量が減少し、血流が滞ることで神経が圧迫されやすくなります。このため、手足にしびれを感じることが多くなるのです。
さらに、皮膚が薄くなり乾燥しやすくなるため、手足の刺激に対する敏感さが増し、しびれを感じやすくなります。
病気が原因のケース
更年期に手足のしびれが生じる場合、ホルモンバランスの変化だけでなく、病気が関わっていることも考えられます。代表的なものとして以下の病気が挙げられます。34
- 腱鞘炎
- 手根管症候群
腱鞘炎では、手首や指を動かすときに痛みやしびれを伴う炎症が発生しやすくなります。更年期には筋力が低下するため、腱鞘炎が悪化しやすく、しびれを引き起こす原因となることもあります。
手根管症候群は、手首の手根管で神経が圧迫されることで発症する病気です。特に親指や人差し指にしびれや痛みが現れるのが特徴です。更年期には症状が進行しやすく、握力が低下する場合もあります。
日常生活でできるセルフケア
更年期症状に関連した手足のしびれの場合は、血の巡りを促進する効果が期待できる食生活や、適度な運動、マッサージなどのセルフケアを日常生活に取り入れることで、予防・改善しやすくなるでしょう。
以下に、代表的なセルフケア方法をご紹介します。
栄養バランスの見直し
骨を丈夫にするビタミンDや、血行を促進するビタミンEを積極的に摂取することが大切です。
具体的には、魚類、キノコ類、ナッツ類、緑黄色野菜などを取り入れ、栄養バランスを整えることで、しびれの予防や改善が期待できます。
適度な運動
適度な運動を生活に取り入れることで、血行が良くなり、しびれの改善につながります。ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を日常的に行い、体を動かす習慣をつけましょう。
半身浴やマッサージ
ぬるめのお湯で半身浴をすることで全身の血行が促され、手足の冷えやしびれの軽減に役立ちます。また、しびれを感じる部分を軽くマッサージすることで血流が良くなり、リラックス効果も得られます。
手足のしびれの治療法
手足のしびれが日常生活に支障をきたす場合、早めの治療が必要です。
以下、しびれの原因に応じた治療法を見ていきましょう。
腱鞘炎の治療
腱鞘炎によるしびれの改善には、次のような治療法があります。3)
- テーピングやシーネ固定による安静保持
- 薬物治療
- 手術療法
腱鞘炎の治療には、まずテーピングで手首や指を固定し、腱の炎症を抑えながら痛みやしびれを軽減する方法があります。薬物治療では、鎮痛剤や消炎剤の内服や、ステロイドの注射で腱の炎症を抑え、症状を和らげます。
さらに、症状が長引き悪化する場合には、腱鞘を切開し神経への圧迫を解消する手術療法が検討されることもあります。
手根管症候群の治療
手根管症候群によるしびれの改善には、次のような治療法があります。4)
- シーネ固定による患部の安静
- 薬物療法
- 手術療法
手根管症候群の治療では、まずシーネなどを用いて手首を固定し、神経への圧迫を和らげます。薬物療法では、炎症と痛みを抑えるために消炎鎮痛薬やビタミンB12などの飲み薬が処方されることがあります。
症状が改善されず悪化する場合には、手術によって手根管を切開し、神経の圧迫を解消する方法が検討されます。
ホルモン補充療法
更年期によるしびれに加えて手足に痛みが生じる場合、ホルモン補充療法が行われることがあります。ホルモン補充療法によりエストロゲンの低下を補うことで、しびれや痛みの緩和が期待されます。1)2)
漢方療法
更年期のしびれには、漢方療法も有効とされています。症状や体質に合わせた漢方薬の使用が、しびれの緩和に役立つことがあります。1)2)
東洋医学では、加齢に伴うしびれや冷え、腰痛などの症状を「腎虚」と呼び、通常は「八味地黄丸」で治療を行います。5)
痛みが強い場合には「牛車腎気丸」が選ばれることもあります。また、血流障害が関係する場合には「疎経活血湯」などの漢方薬が使用されることもあります。5
症状が悪化する場合は?何科を受診?
日常生活の動作や活動に支障が出るほど症状が悪化している場合、慢性関節リウマチや膠原病などの疾患が隠れている可能性も考えられます。6
気になる症状がある場合は、早めに専門医の診察を受けることが推奨されます。特にリウマチ科や神経内科などが適した診療科です。
また、急に体の片側にしびれが起こった場合は、脳梗塞や脳出血などの脳の血管の病気である可能性もあります。この場合は、呂律がまわらない、ふらつきなど他の症状が現れていることもあります。7
早期の治療が重要なので、こうした症状がみられた場合はすぐに救急外来や脳神経外科といった医療機関を受診しましょう。
更年期の手足のしびれには血行をよくすることが大切
更年期の手足のしびれは、ホルモンバランスの変化に加え、血行の滞りが影響していることがあることをお伝えしました。
日常生活で血行を促進するセルフケアや適切な治療を取り入れて、症状の緩和を図ってみましょう。